Salon
サロンへようこそ!
ここには様々な業界の人が集っておしゃべりを愉しんでいきます。
どうぞごゆるりと。
〜二月はじめ、晴れ、夜。男二人、近所の鮨屋で飲んできた。
N:いやあ旨かったなあ。安いし。刺身盛りなんかすげえボリュームあったぜ。
K:酒も安かったよ。浦霞が500円だから。
N:やっぱ魚食うなら鮨屋だな。
K:あそこの大将が言ってた、普通の飲み屋さんと同じモノ出してもしょうがないって。それでも今の時代、みんな居酒屋に行っちゃうから寂しいって。
N:居酒屋はさあ、別の愉しみ方があるじゃん。俺らなんかも人数集まってどーんとやるときは居酒屋が気安くていいんだ。食い物飲み物なんでもあるから。
K:TPOだよ。
N:“酒を飲むところは居酒屋”っていう発想はコンビニ文化からきてると思うね、俺は。
K:ああ、便利だからね。
N:景気が悪いから安い居酒屋に行くっていうのもあるけど、それならもっと昔はどうなの、って考えると、今よりももっともっと貧しい時代、蕎麦屋で一杯なんていうことをみんなやってたわけだからな。
K:昔で思い出したけど、今ドラマで『砂の器』やってるよ。
N:ああ見た見た! 懐かしいよなあ。
K:あのドラマ、照明が面白い。お前どう思う、元照明として。
N:わざと逆光で撮ってるんだな、そういうシーンが多い。俺はあれ観てイーストウッドの『許されざる者』を思い浮かべた。
K:あれも逆光が多いの?
N:逆光というより、あんまり光そのものを照てないで撮っちゃうんだよ。建物の中のシーンとか、かなり暗いだろ? 普通はレフで外光取り込むか照明使うんだけど、暗いまんま撮ってるんだよ。カメラとかフィルムの品質が向上したからこそ出来るんだけど、でもああいう撮り方してるのってあまりないよ。
K:照明で雰囲気全然変わるねえ。
N:そりゃそうだよ。
K:砂の器、久しぶりに原作読みたくなった。
N:売れてるらしいな。
K:僕たちあれ読んだの中学生だったよ。そうそう、昔の映画のテーマ曲、テープに入ってるよ。『宿命』。
N:あのピアノ曲か。ドラマで使ってるのと同じ曲?
K:いや、違う。雰囲気は似てるけど。
N:ドリカムが主題歌歌ってるな。
K:あれ歌謡曲っぽくていいね。正月にね、田舎で友達と飲んだんだ。そのとき有線であの曲流れてさ、「お、なんだなんだ?」なんて聴き入ったよ。
N:CD買いますか?
K:それがさあ、あれ途中で変なシャウト入るんだよ。それで躊躇しててね。

N:シャウトは彼女の得意技だぜ。
K:それがいかにも唐突でね。何て言ったらいいのか、何故かちょっと怒りを爆発させてるような。曲調とか歌詞とかしっとりとしてて昔の歌謡曲っぽいのに、そこだけ浮いてるんだよ。「何で?」って思う。
N:しょうがねえだろうな、シャウトって意外と難しいから。歌謡曲然としているところにソウルっぽいシャウトを入れて、なんか新しいものを作ろうとしたんじゃねえかな。
K:友達にそのこと言ったら「お前は辛口だな」と言われてしまった。
N:はははは。
K:渡辺謙、やっぱりいいね。
N:ゴールデングローブだったかな、ノミネートされたときに「思ってもなかった。ただ良いものを作ろうと必死に生きてきました」っていうこと言ってたんだ。俺、「生きてきた」って何だろ? って一寸思ったけど、あの人、昔、白血病やったんだよなあ。
K:言葉に重みあるね。
N:命が掛かるって、すごいことだぜ。俺なんかそんな経験ないからね。毎日日和見で。
K:『ブラックレイン』の松田優作とか。
N:まあせいぜい旨いコーヒー淹れることぐらいしかやってないな、俺は。
K:それだとヘミングウェーだな。あっちはレインじゃなくてリバーだ。「ずっと昔、ブラックリバーのほとりにいたときのことだ」
N:はははは。ホプキンズだ。
K:このコーヒーも旨いよ。
N:そりゃ良かった。
参考資料
TBSエンタテイメント『砂の器』毎週日曜日21:00より放送中
新潮文庫『砂の器』松本清張
松竹映画『砂の器』1974年 監督 野村芳太郎 主演 丹波哲朗、森田健作
ユニバーサル『やさしいキスをして』2004年 DREAMS COME TRUE
WARNER BROS.『許されざる者』1992年 監督 クリント・イーストウッド 主演 クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン
UNIVERSAL『ブラック・レイン』1989年 監督 リドリー・スコット 主演 マイケル・ダグラス、高倉健
新潮文庫『ヘミングウェイ短編集1』訳 大久保康雄
二月おわり、午後
一月半ば、夕方