Salon
サロンへようこそ!
ここには様々な業界の人が集っておしゃべりを愉しんでいきます。
どうぞごゆるりと。
〜四月半ば、晴れ、夜。男二人、都内某所にて
Y:お疲れ様でっす!
K:あいよん!(缶ビールで乾杯)
Y:いやあ今日は忙しかったっす。手伝ってもらってよかった。
K:まあ僕が来たからにはどんなゲンバもスムースムスに収まるからねえ。二度と呼ぶんじゃねえぜコンチクショウ。
Y:こっちこそお断りだいこの唐変木!
K:わははは!
Y:相変わらずバカですねえ。最近どこか面白い店行きました?
K:ええっとねえ、あ、最近ね、品川の焼鳥屋によく行くなあ。焼き鳥と言ってもブーちゃんがメイン。鳥は皮くらいかな。
Y:美味いっすか?
K:そりゃもう、美味い美味い。
Y:いいなあ、連れて行って下さいよ。
K:あんたと二人じゃあ色気がないな。
Y:悔しいわあ、この人ったら!
K:でね、壁に品書きが貼ってるんだけど、“おひたし”が“おしたし”なんて書いてあるんだ。なんかいい感じなんだね。
Y:イキだね、イナセだね。
K:お前はなんか面白いことあった、最近?
Y:うんと、ええっとですねえ、夏目漱石読んでるんですよ、最近。
K:もうちょっと飲むかな。このワイン飲んじゃってもいいんだろ?
Y:こらあ! 話しを聞けえ!
K:わはははは!
Y:たくもう。あ、これも飲んでいいっすよ、サンプルなんで。
K:で、漱石の何を読んでるの?
Y:ちょうど今朝読み終わったのが『それから』です。次は『門』ですね。

K:どう?
Y:う〜ん、面白いんですけど、ちょっと暗くなるんですよね。でもどうなるのかなあって続きが気になって読んじゃうんですよ。昔はもっとフツーに読んでたはずなんだけどなあ。
K:野田知佑がね、ユーコン下りに行くときにやたらと本を持っていくんだけど、荒野で読んで面白い小説は大藪晴彦とかディック・フランシスなんだって。で、漱石を読むと「なんでこの人たちは運命に流されていくままなのか?」って不思議に思えて楽しめないらしい。
Y:それって元々の好みじゃないですか?
K:日本にいるときは漱石も面白いらしい。
Y:じゃあ僕は、心はいつもユーコン川にあると?
K:ば〜か!
Y:ひゃははは! だってそういうことじゃないですかあ!
K:本も結局鏡なんだよなあ。
Y:鏡と言えば!
K:うぉ?
Y:品川、すごく変わりましたよね。他の街もどんどん変わってるじゃないですか? 吉祥寺は大きく変わってないけど、昔の店はもうだいぶなくなったし。
K:ああ。
Y:街の変貌をどう感じますか?
K:う〜ん、いいと思うこともあるし、やだなと感じることもある。
Y:それも鏡じゃないですかねえ。何か保守的な気持ちになってるときは、変わりゆくものを見て寂しくなるじゃないですか。張り切ってるときには新しいところ開拓しようかとも思うけど。
K:かもな。あとは気持ちの他にさ、自分の住んでいるところが近代的になるのは歓迎するけど、想い出の旅先とか自分だけが知っている穴場みたいな場所が変わってしまうのはイヤだっていう、勝手な心理もあるよな。
Y:あ、でもやっぱ基本的に、変わるのはイヤっすね、僕的には。
K:基本の他にもなんかあるの?
Y:え? いやあ、基本だけ、みたいな・・・。こらあ!
K:わっははは!
Y:とにかくもう、今のスピードにはついていけないっすよ。不便でも昔のままでいい、僕。
K:去りゆくものは悲しい。渋谷の東急文化会館閉鎖のときはかなりショックだったよ。
Y:今日これからどうします? もっと飲んじゃいます? っていうか飲まずにはいられなくなってきたんですけど。
K:じゃあ品川行くか? 多摩自慢たっぷり飲もう。
Y:あんたみたいな飲んべえには、金輪際二度と仕事頼まないからな! 憶えてろ!
K:いやあまたお呼ばれします。すんません。
Y:ひゃは! ようし行きますか!
三月おわり、夜
二月おわり、午後
二月おわり、午後
一月半ば、夕方