散歩道


神保町〜お茶の水


 三月半ばの日曜日、曇り時々晴れ。今日は都営三田線神保町駅で降りて、JRお茶の水駅まで散策することにしよう。
 最近は“散策ブーム”なのだそうである。そういえばカラフルなウィンドブレーカーを着た中高年のカップルが、のんびりと歩きながら写真を撮ったりしているのをよく見かけるようになった。若者の場合は一人で歩いていることが多いみたいだ。長引く不景気が市井の人々に対してどのような影響を与えているのか、ということは面倒だから全く考えないで、自分もその中の一人として今日も散策するのである。そんじゃあ行ってみっかな。

 神保町といえば古本の街。
 東京都古書籍商業協同組合神田支部(読んだ?)で発行している古書店名簿によると、去年の十二月時点で登録している古本店は158店舗もあるのだ。目立つ部分では靖国通りの南側にずら〜っと店舗が建ち並び、路地を入ってすずらん通りに入るとそこもまた両側にずらずら〜っと、そのまた横町に入ってもまだある。もうどこにでも本屋がある。神のごとく偏在するのだ。うん?
 しかしこれだけあっても、それぞれの店舗は自分の得意とする分野の書籍を扱っているから、ちゃんと共存しているのである。卒論を控えた学生には勿論、お勉強しなければいけない社会人にも、アングラなアイドルの写真集が欲しいマニアの人にも、この街は本当にありがたいのである。ある本屋のご主人は、ここ数年で店舗数は増えているようだ、と言っていた。大したものである。

 この街に集まる人々は、書籍に対する造詣が深い人が多い。そして仲間意識というか、相互扶助の気持ちが強いのである。

僕:「ヘミングウェーの『河を渡って木立の中へ』を探しているんですが。翻訳で」
主:「全集の中に入ってるよ。そこの一番上のやつ」
客A:「新潮さんで単行本出てるだろ」
僕:「今は出てないんですよ。全集はいらないしなあ」
主:「訳は? 誰がいいとかあるの?」
僕:「大久保さんか沼澤さん」
客B:「それだと新潮さんだねえ」
客A:「そうだな」
主:「〜書店さんで探してもらいな。あそこは海外の文庫多いから」

 こんな具合。江戸人の気質が感じられるではないか。

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