散歩道


青山1丁目〜豊川稲荷



 一月の終わり。都営浅草線に乗り、青山1丁目で降りた。天気は晴れ。風がなくて、陽があたると暖かいくらいだ。
 地下鉄の出口を出てすぐに見えるのはホンダのビル。以前、アイルトン・セナのF1マシンが展示されていたことがあった。青山通りを赤坂見附方面へ歩く。ここはいつも交通量が多い通りなのだが、車道、歩道ともに比較的広いことと、赤坂御用地があるために上空の展望が開けていることから、開放感を感じることが出来る。歩いていてとても気持ちがいい。前方には樹木の上に赤坂プリンスが見えている。
 通り沿いの青山ツインビルは、様々なテナントが入っている便利な商業ビル。歩道に面した店舗はウインドウショッピングに最適だ。
 歩道橋を渡ってさらに歩く。やがて御用地の土手が切れると、豊川稲荷の木壁と赤提灯が見えてくる。ここは江戸時代に大岡越前守忠相公が信仰していた尊像を祀っているという由緒ある場所だ。本殿は愛知県の豊川閣。お稲荷様ということで敷地内には稲荷像が点在するが、社の中では禅宗のお坊さんがお経を上げている。神仏混合なのだ。
 ここにお参りに来る人は昔から医者、弁護士、個人事業主や芸能人といった人が多い。勿論地元の人もやってくる。赤坂のど真ん中にあって、実に静かな一画だ。僕もまだ初詣をしていなかったので、神妙にお参りした。それからここの名物である厳しいおみくじをひく。小吉、中吉とも少なくて、大吉になるとめったに出ないと言われているのだ。だからここで凶をひいてもみんな落ち込むことはないのである。さて、くじ棒は八十六番。棚に入ったおみくじをおそるおそる見ると・・・。結果は内緒なのだ。
 それから敷地内の文化会館にある茶店へ入る。お参りをしたらここで甘酒を飲む、というのが正しい参り方なのである。
 座布団の敷かれた椅子に腰掛けて甘酒を啜っていると、いつの間にか時間の流れ方が変わっていたことに気づく。普段、何事にしろセカセカと動くのが当たり前で、自分ではいつも時間が足りないと思っている。しかしそんな個人の感覚とは別に、時間というものは悠々と流れているのだ。古い鋳鉄の五徳の上で、大きなヤカンからゆっくりと湯気が上がっている。近所の人がやってきて、世間話をする。「これショウガ。これを入れると美味しくなるからね」と店の人がもってきてくれる。壁には売り物である稲荷様の面や像が所狭しと並んでいる(売り物って言うのか?)。ともかくこれで安心、今年も無事に過ごせるだろう。


 桜田通り