Allegro,con brio!
Sweet Love

昨年春、高橋真梨子が出した新譜で『真昼の別れ』というものがあった。バリバリの80年代サウンドを聴かせてくれる一曲だ。
音楽業界でのエイティーズブームは、かれこれ数年続いているだろうか。今の時代に60年代・70年代・80年代の三世代がずっとウケ続けているのだが、その中でも80年代の音楽はひときわ明るく輝いている。世界中のミュージックシーンがMTVを通じて紹介されるようになった時代だ。ブリティッシュ、アイルランド、ドイツ、アメリカ、オーストラリア、日本等々、どこの国でもヒット曲が誕生して世界中に配信された。
それ以前の時代は単純で分かり易かった。50年代はプレスリー、60年代はビートルズと決まっていたからだ。しかし70年代に入るとポップ音楽をめぐるシーンは変わる。中でもロックとフォークは思想的な背景が発達して、大きなムーブメントとなる。普段聴いていたり歌っていたりする音楽が、自己を表現する手段になった。
80年代の代表と言えばやはりマイケル・ジャクソンだが、彼の他にも優れたミュージシャンが大勢いた。彼ら(彼女ら)はノリのいい曲をいくつも創作した。しかも耳に馴染んで憶えやすいからメディアでも良く使う。ホンダは車のCFでこれまで何曲か80年代のヒット曲を使っているが、どれも売れているらしい。
明るくテンポのいい曲が続出する一方、バラードの名曲も数多く誕生した。80年代バラードにはいくつか共通項がある。生ストリングスが美しいこと、しっとりとした太いベースが前面で歌うこと、エレキギターのカッティングがシンプルに絡むこと(ワカチコンもあり)、ローズやバイブラフォンが使われていること、ある音源を使うシンセが入っていること等だ。それらはどこまでもスイート&メロウ。大人のバラードだ。そんな曲がキチンと聴かれていた時代だった。
さて、『真昼の別れ』に戻ろう。出だしからローズ風のピアノがあり、これはただ事ではないなと思わせる。高橋真梨子が歌い始める。ストリングスが入ってくる。ワカチコンが入る。ベースが朗々と歌いながら入ってくる。旋律が急激に盛り上がったところでドラムが入り、しっかりとした4拍子のリズムが始まる。木訥なカッティングが泣かせる。シンセがたまらない。まさにエイティーズバラードの王道だ。
この曲はグローバー・ワシントン・ジュニアの『Just the two of us』にインスパイアされているのは明らかだ。これまでにもそういう曲はいくつもあった。しかし実にいい曲に仕上がっているから、パクちゃんとは言わないのだ。あくまでもインスパイアされたんだな、と言うのが正しいのである。何よりも21世紀にエイティーズバラードを復活させたことが嬉しい。彼女の優しい歌い方はこの曲にぴったりだ。
参考資料
ビクターエンタテインメント(株)『真昼の別れ』2003年 高橋真梨子
WARNER com.『WINELIGHT』1980年 グローバー・ワシントン・ジュニア
Birdland
鳥は星のかたちをした庭に降りる