郊外へお出掛けなのだ


奥多摩〜丹波山村

 並行して走っているのは青梅線だ。『古里駅』『鳩ノ巣駅』あたりに来た頃はすでに午後一時過ぎ。どんどん新緑が濃くなる。雨に濡れ露をまとって尚更鮮やかに見えるようだ。雨のドライブも悪くないですなあ。
 奥多摩の風景というのは懐かしさに溢れている。道ばたの“へそまんじゅう”という看板などはもう二十年近く同じままあるのだ。旅行者の勝手な心理で、ずっとこのまま変わらないで欲しいなあと思う。
 ある橋を渡ったところで写真を撮るために車を駐めた。周囲はえもいわれぬいい匂いがしている。何だろう? 鼻からたっぷりと吸い込んでみた。確かに嗅いだことのある匂いなのだ。ほんのり甘く、瑞々しい。疑問に思ったけど取りあえず車に乗り込み、再び出発。奥多摩湖の脇をどんどん走る。
 三田を出てから約四時間経った頃、県境を越えた。丹波山村だ。そして目的地の『のめこい湯』はすぐそこだ。
 改装されて立派になった建物は、吊り橋を渡った木立の中にあった。ここでもさっきと同じ匂いがしていたが、吊り橋を歩いて渡っているときにようやく想い出した。松の樹皮が濡れた匂いなのだ。これまでもキャンプなどでさんざん嗅いだことがあったはずだが、これほどのいい匂いだとは気付かなかった。口から吸い込むと舌のうえに甘みを残していくかと思うほどの芳香なのだ。
 『のめこい湯』は浴槽が大変大きく、脚を広げて思いっきり伸ばしたままでいられる。背中からは強めのジャグジー。首まで浸かったまま、二十分三十分と経っていく。もうあがろうと思って立ち上がりかけると、また違った部位にジャグジーが当たって気持ちよく、再び動けなくなる。まさに極楽。

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