ここで食する!
立川『田堀』 続き

開業してから十三年とのことだが、品書きにある値段は当初から一度も変えてないという。何と“もりそば”が500円なのだ。昨今そんな値段で食べられる手打ち蕎麦屋はまずない。しかもここの蕎麦は本格的だ。
蕎麦と小麦の割合は8:2。時期によっては9:1と殆ど蕎麦粉。当初は信州の蕎麦の実100%だったが、現在は北海道産の実もブレンドしている。北海道産は独特の甘みがあって、それをうまく取り入れることが出来たという。ルーティンにハマることなく、美味い蕎麦を追求し続けている姿勢が嬉しい。

いよいよ締めに“もりそば〜500円”を貰う。瑞々しく光る蕎麦を手繰ると、殆ど蕎麦粉の割合なのにモチモチとした食感も味わえる。これは蕎麦の実を石臼で挽いているからこそ出せるという。つゆに付けずに味わってみると、微かな甘みと香りの奥に、豊かな蕎麦本来の滋味が広がるのが分かる。美味い。本当にこだわって作り上げているのだ。
さて蕎麦好きにはたまらないのが最後の蕎麦湯。これは空いた湯飲みに注いでいただくのが正しい飲み方だ。つゆを割って飲むと淡い甘みや香りが消え失せてしまうのだ。湯飲みが空いていないときには堂々と「湯飲み下さい」と言おう。田堀で出てきた蕎麦湯は濃くて大変宜しかった。全部飲んでしまった。

取材中も常連らしいお客さんが絶えなかった「こんちは〜、今日は冷えるねえ」「まずは焼酎貰うか」。店員と客とのコミュニケーションが、都内とは微妙に違う。下町気質でもない。多摩地方の木訥さがあるのだ。だから本格派蕎麦屋ではあっても、一見さんも気軽に寄れる雰囲気がある。五日市街道沿いということで、ドライブを兼ねて是非とも立ち寄りたい。まだまだ穴場的存在だ。
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