映画館


鑑賞作品 イノセンス


K:ここで初めてのアニメーション作品だね。じゃあ僕は映像やるから、Oはストーリーとか設定のほう話してよ。
O:登場人物全てが、同じような台詞を同じような言い回しで喋ってる。例えばわざと言葉尻をとらえさせるような話し方。これ、現実的にはこういう話し方をする人ってあんまりいないよなあ。しかし作品の中の会話シーンは、全員がこの話し方のやりとりで成立してるんだよ。相手になっているほうもいちいち「と、言うと?」なんてキチンと先を促している。どうもおかしい。
K:僕は格言の引用のほうが気になった。聖書とか、昔の詩人とか。
O:全員が格言ばかり引用している。全員が。いやあ実に格好いい。
K:それ揶揄?
O:どんな人物が出てきても、どんなシーンでも、結局作者が言いたいことを引き出すために、登場人物はクールでシャレた会話ごっこをやってるんだな。何だったら主人公がずっと独り言を言っててもこの作品は成立してしまう。全て予定調和のもとに不必要なムズカシイ台詞を並べてる。
K:映像は凄かったね。「これだけきれいな絵を描きました」っていう訴えがぐいぐいと。特に凝った絵が出ると必ずそのあとで寄りのカットが入るんだ(注:近くからのショット)。「うわ、よく描いたなあ、これは寄るぞ寄るぞ」と思ってるとちゃんと寄る。ただね、いくらCGの使い方が上手になって物凄い絵を描けるようになっても、その絵が技術のための技術でしかないなら何にも伝わってこないんだよね。色の響きあいなんか皆無だった。極彩色の氾濫という感じ。
O:それも同じことだな。自分の美意識とか価値観を押しつけようとする歪んだ自意識が見える。
K:あらら。
O:人物の設定っていうのは、それこそノート何ページも使って、どこの出身、食い物の好みはどう、家族構成、言葉の訛り、主義主張、そういうのを一人一人についてやっていくものなんだよ。そこまでやったのかどうか知らんが、結局みんな同じように見えるということは、人間関係を疎かにしている証だと思う。もう一点は、未だにアニメ世界独特の台詞で埋め尽くされているということだ。
「お前さんといると命がいくつあっても足りんぜ」
「そこで物思いにふけるのもいいが、予備弾倉はあと一つだ。早いとこ頼むぜ」
 何だ、これ? バカみたい。こういうの、オタク連中は復唱したりして喜んでるのかね。こんな作品を作り続けてるようじゃアニメに未来はないね。
K:あなたひょっとして怒ってるの?
O:ふっふっふ。でもなあ、俺はアニメが嫌いだと言ってるわけじゃないんだよ。ただ、陳腐な台詞が出てくると何だかムカつくんだ。現実世界を何も分かってないってな。いいかね、こんな話しがある。イラクのある地域で、米軍に対するゲリラ攻撃が活発なところがあった。米軍は周囲の村民を尋問したが、村民は協力しない。そこで米軍は懲罰として、果樹園を根こそぎ潰した。ナツメヤシなんかが植えてあったらしい。ナツメヤシというのはイラク人がとても大切にしている木なんだ。まあ日本人にすれば大事に育てた梅とか桜みたいなものかな。それをブルドーザーで根こそぎ薙ぎ倒した。村民がやめてくれと泣いて頼んでる目の前でな。
K:うわあ。何でそんな話しをー。
O:まあ聞けよ。その光景を前にして、突然大声で泣き崩れる米兵が出たそうだ。命令を実行しなければならない義務と、そのあまりの理不尽さの板挟みにあってな。これが実際の戦場の話しだ。ところがアニメでは大事な人が死んでしまうシーンで「許せよ、相棒。天国で会おうぜ」なんて下らない台詞を言わせてる。もっともっとリアリズムを追求しないと。訴えるものを研ぎ澄まさないと。幅広くものを見てもっと考えないと。自分の知っている範囲だけの好きな世界に生きているのがオタクだとしたら、そんな人が作ってるアニメなんて同族で固まって観るものだとしか思われないよ。
K:でも来月から試写会でアニメ続くよ。大丈夫?
O:面白いんならいいんだよ。深夜にやってる『攻殻機動隊』は面白いんだから。俺は早く『キャシャーン』と『デビルマン』を観たいね。アニメじゃないけど。二つとも子供のとき好きだったし、訴えるものがはっきりしていて示唆に富んでいるからな。
K:どっちも内容は憶えてないなあ。あの時代は核と公害が身近な恐怖だったよね。ノストラダムスの大予言も、最後は核戦争っていう予想が多かった。僕ら子供の頃は現実の恐怖だったよね。
O:今の時代はまた違う恐怖がある。東京だってテロ予告が来てるんだ。戦闘が好きなら、どうしてそういうものを書かない?
K:今回はKさんお怒りの巻でした。次のアニメ作品は『アップルシード』です。
O:くっそー。帰ったら999観よう。

 参考資料
 プロダクションI.G『イノセンス』日/2004年 監督/押井守 声優/大塚明夫、山寺宏一
 田中宇の国際ニュース解説
 Independent.co.uk
 松竹『CASSHERN』日/2004年 監督/紀里谷和明 主演/伊勢谷友介、寺尾聰
 東映『DEVILMAN』日/2004年 監督/那須博之 主演/伊崎央登、酒井彩名
 青心社『APPLESEED』日/2004年 監督/荒牧伸志 声優/小林愛、小杉十郎太
 東映『銀河鉄道999』日/1979年 監督/りん・たろう 声優/野沢雅子、池田昌子
 


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